穂村弘『迷子手帳』のあらすじ・感想 ~私もあなたも気付けば迷子~

 

『迷子手帳』

 この記事は、穂村弘の『迷子手帳』についての書評です。

 短歌はもちろん、評論やエッセイ、絵本や翻訳までさまざまな分野で活躍している歌人穂村弘

 そんな穂村弘が独特なユーモアで世界を切り取った最新エッセイ、『迷子手帳』を紹介します。

 

『迷子手帳』のあらすじ

 歌人として幅広く活躍する穂村弘が、北海道新聞や他の雑誌などに連載したエッセイ57編を集めた本です。

 穂村弘の最新エッセイ。

 穂村さんが人生で「あれ?」と「迷子」になった瞬間が綴られています。

 穂村さんの、どこか過剰なような繊細な感性と、世界を反転させてしまうようなユーモアのある言葉が融合したエッセイです。

 どれも独立したエッセイなので、どこから読んでも楽しめます。

 

『迷子手帳』感想・レビュー

 『迷子手帳』を読み終えた時、なんだか世界から取り残されてしまったような、異世界に飛ばされてしまったような、そんな感じになりました。

 まさに、「迷子」。

 穂村さんの持つ独特のユーモアや言葉の選び方がそうさせるのでしょう。

 

いつまでも迷子であり続ける人のための手帳です。

これ一冊あれば、貴方もきっと迷子になれる。

 

 これは、あとがきに書かれていた文を帯に抜き出したもの。

 穂村さんが、まさに生きてゆく世界の中で、人生の中で「あれ?」と首を捻る瞬間、世界の中で迷子になった瞬間がポツポツと書かれています。

 私が一番じんとしたのが『愛の計測』。

 一体、愛とは何なのか、愛ってどうやって測るのか、そもそも測れるものなのか。

 心にじんわりと温かさが広がる中で、「うーん」と考えさせられました。

 

 この本を読んだ瞬間だけでなく、人は往々にして人生で大なり小なり迷子になるけれど、この本があればきっと大丈夫、と思わせてくれるような気がしました。

 

 この本は「手帳」という言葉を冠するだけあって、手帳のように表紙やページの角が丸くなっています。

 読者としては、「この本は手帳です」というリアリティを出すような工夫も嬉しかったです。

 

感想・まとめ

 人生で迷った時、あるいは、過去を振り返って「あっちにしておけばよかった」と思った時。

 そんな時に、穂村弘著の『迷子手帳』はお守りになります。

 迷子になる瞬間は誰しも一人だけど、迷子になったことがある人はあなただけじゃない、一人じゃない、と思わせてくれました。

 何だか手帳っぽい見た目の『迷子手帳』を、本物の手帳とともに、机に広げてみてください。